TOEICとは何か?その歴史と世界的な影響を知ろう

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TOEICの歴史:なぜ誕生し、日本でこれほど普及したのか?

英語学習者なら一度は聞いた事があるTOEIC。
就職活動や昇進の条件としても広く知られていますが、その誕生の背景や開発者、そして日本との深いつながりについてご存じでしょうか?この記事では、TOEICの成り立ちから現在に至るまでの歴史を紐解きます。

TOEICの誕生:誰が作ったのか?

TOEIC(Test of English for International Communication)は、1979年にアメリカの非営利団体ETS(Educational Testing Service)によって開発されました。ETSはもともとTOEFLやGREなどの試験を運営していた教育評価機関です。

このテストの開発にあたって中心となったのが、当時の国際ビジネス界で高まる「実用的な英語力評価」のニーズです。しかし実は、そのきっかけを作ったのは日本の経済団体でした。

背景にある日米経済関係

1970年代後半、日本は高度経済成長の末に世界第2位の経済大国となり、貿易摩擦がアメリカとの間で激化していました。日本の企業がグローバル展開する中、「社員の英語力を客観的に測定したい」という声が産業界から上がります。

TOEICの誕生には、日本人の北岡靖男氏と渡辺弥栄司氏の尽力が大きく関与しています。北岡氏は、当時の日本における英語能力評価の必要性を感じ、米国の非営利テスト開発機関であるETS(Educational Testing Service)に直接交渉を行い、TOEICの開発を依頼しました。この交渉は1977年9月から始まり、2年の研究開発を経て、

TOEICの歴史的な展開

1979年12月: 日本の5都市(札幌・東京・名古屋・大阪・福岡)で第1回TOEICテストが実施され、約3,000人が受験しました。

1986年: TOEIC運営委員会が発展し、一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が設立され、TOEICの運営を引き継ぎました。

2006年: TOEICテストが改訂され、新しいバージョンが導入されました。

北岡靖男氏と渡辺弥栄司氏の経歴

北岡靖男(1928~1997年): 元TIME誌のスタッフであり、日本における英語能力評価の重要性を認識し、TOEICの開発を主導しました。

渡辺弥栄司(1917~2011年): 元通商産業省の官僚であり、北岡氏の理念に共感し、TOEICの導入と普及に尽力しました。

彼らは、TOEICの開発と導入を推進するために、財団法人世界経済情報サービス(WEIS)を設立し、その後、TOEIC運営委員会を発足させました

その声を受けて動いたのが、国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)の前身となる日本の経済団体でした。彼らはETSに対して「TOEFLのような学術的英語ではなく、ビジネス現場で使える英語を評価するテストを開発してほしい」と依頼します。

こうして誕生したのがTOEICです。

日本での爆発的な普及:なぜここまで広がったのか?

当初、TOEICは日本企業の海外駐在員向けに導入されましたが、1980年代に入ると「スコアが人事評価に使える」「英語研修の効果測定になる」として、一般社員にも受験が広がりました。

その後、1990年代の就職氷河期には、学生が「就活で有利になる」としてTOEICスコアを履歴書に書くようになり、学生向けに普及。2000年代には官公庁や大学でも採用されるようになり、TOEICは“国民的テスト”と呼ばれるまでになりました。

TOEICにまつわるトリビア

  • 開発初年度(1979年)の受験者数は約3,000人だったが、現在は年数百万人が受験
  • TOEICスコアは10点〜990点満点のスコア制。かつては満点でも英語が話せないと揶揄されることも
  • リスニング&リーディング(L&R)テストに加え、2007年からはスピーキング&ライティング(S&W)テストも開始
  • 一時期、日本でのTOEIC売上は世界市場の80%以上を占めた

現在のTOEICと今後の課題

現在のTOEICは、日本・韓国・台湾などアジアを中心に受験者が多く、英語力の証明として幅広く使われています。ただし、実際のコミュニケーション力との乖離が指摘されることもあり、「スピーキング重視」「AIによる評価」など、改革の動きも出始めています。

また、日本国内では「TOEICスコアだけでは真の英語力を測れない」として、英会話スクールや実践型英語教育との併用も注目されています。

まとめ

TOEICはアメリカで開発されたテストですが、その誕生のきっかけを作ったのは日本でした。そして、世界に先駆けてTOEICをここまで普及させたのもまた日本です。今後、グローバル化が進む中で、TOEICがどのように進化していくのかも注目すべきポイントです。

現在、米国の非営利テスト開発機関であるEducational Testing Service(ETS)の現CEOはアミット・セバク(Amit Sevak)氏です。彼は2022年にCEOに就任し、世界200カ国で年間5,000万人以上にサービスを提供するETSを率いています。セバク氏は、スペインのヨーロッパ大学、マレーシアのINTI国際大学、メキシコのUNITEC大学など、複数の国際的な教育機関でリーダーシップを発揮してきました。また、教育投資会社Mindset Globalの設立者でもあり、Cambiar EducationやEducation Design Labなどの非営利団体の理事も務めています。 

TOEICテストの開発においては、ETSが主導的な役割を果たしました。日本側では、当時の財団法人世界経済情報サービス内に設置されたTOEIC運営委員会が関与し、これが後に一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)として独立しました。IIBCの初代会長は渡辺弥栄司氏であり、発案者として北岡靖男氏や三枝幸夫氏の名前も挙げられています。 

このように、TOEICは米国のETSと日本の関係者との協力によって開発され、国際的な英語能力評価の基準として広く利用されるようになりました。

この記事を書いた人

Fojoのアバター Fojo エンジニア

「Fojo」はメキシコの言葉で“怠け者”。
その名に恥じず楽な方楽な方へゆるく生きてます。
だから英語の勉強も1番楽な勉強方法で。
在日米軍基地勤務で得たリアル英語を
"テストの点数"より“通じる英語”として楽しくお届け中。

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